戦後の不倫裁判・不貞訴訟の傾向
戦後の不倫裁判・不貞訴訟の傾向はどのようだったのでしょうか
戦前の流れを引き継ぎ不貞慰謝料請求を認める傾向は続きました。
否定するケースが無かったわけではないけれど少数派だったようです。
不貞慰謝料を認めた+αのケース
謝罪広告掲載義務 高松地方裁判所昭和32年11月7日
高松地裁が不貞をされた夫に対する謝罪文を町役場掲示板付近に3日間の掲示することを命じた
愛人に慰謝料請求 東京地方裁判所昭和37年7月17日
アメリカ単身赴任中に出来た愛人と帰国してからも妻と別居し愛人と同居しつづけたことから愛人に慰謝料請求をして認められた
不倫訴訟が少なかったことから新聞記事になったことで、妻が不貞慰謝料を請求する訴訟が増えたと言われています。
不倫をした配偶者の不倫相手への不貞慰謝料を否定したケース
東京地方裁判所昭和37年5月23日
不倫現場を突き止める努力をしたが証拠がなく立証できなかった
鳥取地方裁判所昭和44年3月31日
配偶者が積極的だったため不倫相手への請求を否定した
東京高等裁判所昭和44年7月17日
不倫をした配偶者への請求だったが不倫が始まる前から既に婚姻関係が破綻していた
山形地方裁判所昭和45年1月29日
不貞があっても夫婦関係に波風が立たなかった(そんなことがありえるのか?それなら訴えたりしないのでは?)
東京高等裁判所昭和47年12月22日
不貞があっても夫婦関係にが破綻したとはいえない
横浜地方裁判所昭和48年6月29日
不倫が始まる前から既に婚姻関係が破綻していた
東京地方裁判所昭和49年3月19日
配偶者が積極的に外泊していたため不倫相手への請求を否定した
東京高等裁判所昭和50年12月22日
婚姻関係が破綻してから始めた不貞行為は自然な恋愛とみなされた
東京地方裁判所昭和52年8月25日
夫婦生活が正常ではなかった
横浜地方裁判所横須賀支部昭和53年4月19日
自然な恋愛とみなされた
大阪高等裁判所昭和53年8月30日
不倫をされた妻(夫)の子供が請求するも法律の保護に値する権利ではないと否定
大阪高等裁判所昭和53年9月29日
不倫相手は強制されていて配偶者は黙認していたが2年以上経過して損害賠償請求を起こした。消滅時効制度の趣旨に照らし権利濫用であると認定されたため否定された
名古屋地方裁判所昭和54年3月20日
不倫が始まる前から既に婚姻関係が形骸化していた
戦前の不倫の裁判はどうのような結果を出していたのでしょうか
戦前の不貞訴訟
戦前の不倫の裁判はどうのような結果を出していたのでしょうか
女性が不利なことが通常でした
3つの戦前不倫裁判例
1.大審院明治36年10月1日
「夫は妻に対し貞操を守らしむる権利あるものなれば本件上告人が被上告人の妻と姦したるは即ち本夫たる被上告人の夫権を侵害したものと云わざるを得ず故に原院が夫権の侵害に対する賠償を許容したるは不法にあらず」
夫権を侵害したから賠償しなさいという見解
2.大審院明治40年5月28日
不法行為に困りて生したる損害は金銭上に見積ることを得へきものなると否とを問わす等しく之を賠償するの責任を有する事は同法710条の規定する所なるを以て姦通の為夫権を侵害し之を賠償させるへからさるは勿論
夫権の侵害で精神的苦痛に基づいて賠償しなさいという見解
3.大審院明治41年3月3日
「人の妻と姦したる者は本夫の夫権を侵害したるものにして之に因り本夫が名誉を毀損せられ精神上悲痛を感ずるに至りたるときは慰謝料を支払うべき義務を負う」
夫権の侵害で精神的苦痛に基づいて賠償しなさいという見解
夫貞操義務判決の2つの判例
男女不平等な明治民法下で、夫の不貞行為について妻からの慰謝料請求を認めた事例
1.大審院大正15年7月20日
「配偶者は婚姻契約に因り互に誠実を守る義務を負うものと言うべく配偶者の一方が不誠実なる行動を為し共同生活の平和安全および幸福を害するは即ち婚姻契約に因りて負担したる義務に違背するものにして他方の権利を侵害するものを言わざるべからず」
2. 昭和2年5月17日】(いわゆる夫貞操義務判決)
「他の女が男に妻子あることを知りて情交を通じ之と同棲したるは、妻の権利を侵害したるものに外ならずして、妻は其の権利を侵害せられたるの救済として相当の慰謝料を請求し得るものとす」
夫が妻に対して貞操義務を負うことはないと考えていた根拠
姦通罪の処罰規定(刑法183条)
妻の不貞行為のみ離婚事由になる(旧民法813条)
2つの判例から
貞操義務を「婚姻契約に発生する義務」として相互に認められ、貞操請求権の侵害の問題と捉える試金石となったと思われます。
婚姻関係でなく内縁関係ても不倫をした夫(妻)に対して慰謝料請求を認めた判例も出ています。
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